下関

 

O 高齢化社会が急速に進む中、受診者に占める高齢者の割合は増加傾向にあり、病気の種類も変化しています。一般の大腸肛門の病気(大腸癌、腸炎や痔など)のほか、便漏れや便がスッキリでないなどの訴えも多く聞かれます。その中で「痔が出ている」とか、「下着が汚れる」と訴えて来院される方の中に実は「直腸脱」と言う病気を認めることがあります。

2. 直腸脱について

O 直腸脱は完全直腸脱と不完全直腸脱に分けられ、単に直腸脱というときは完全直腸脱を指すのが一般です。完全直腸脱とは直腸の全層が裏返しになり肛門の外に脱出する状態で、その成因あるいは誘因については諸説が報告されていますが、全てを説明しうる説はありません。先天的因子に後天的誘因が加わり発症するものと考えられています。直腸脱の発生頻度は一般に高齢者に多く、特に女性に多いのが特徴です。しかし若年者の男子にも発生しないわけではありませんが、特殊な場合が多いようです。

O 症状としては直腸の脱出、便漏れ、排便困難が主となりますが、脱出による下腹部の違和感や排尿困難なども見られます。初期は排便時に強くいきんだ時に直腸が肛門から脱出し(肛門の脱出では無いが本人は肛門の脱出と思っていることが多い)、いきむのをやめると自然に戻ります。さらに病状が進むと立ち上がるだけでも脱出し、手を使わないと自然に戻らなくなります。また脱出することで便が出始めても続かず残便感が続いたり、身体活動が制限されたり気分不快をきたします。脱出は大きい場合は10cm以上にもなり、粘膜面は同心円状の皴を呈します。脱出してむくみが強くなると手で戻すことが困難になり、専門医でも腰椎麻酔を必要とすることもあります。

O 治療法としては手術が適応となりますが、その手術方法は成因や誘因と同様50種類以上にものぼり、数多く報告されている手術成績もまちまちです。術式は一般に会陰部から操作する会陰式(経肛門式も含む)と下腹部を開腹する腹式に大別されます。会陰式の手術は腰椎麻酔(場合によっては局所麻酔でも可)で施行できるため侵襲が低く比較的安全ですが、再発率が高いのが欠点です。それに比べ腹式は再発率が低く成績は良いのですが、全身麻酔で行うため侵襲が高くなります。最近では腹腔鏡による手術が可能となり手術侵襲は減少しました。しかし心臓に重篤な病気があり全身麻酔をかけることが危険な場合などは腹式の手術はできません。ちなみに現在の欧米における直腸脱の標準術式は腹式としてlaparoscopic ventral rectopexy(腹腔鏡下に腹側の直腸を固定する方法)が用いられています。腹式、会陰式のどちらを選択するかは、(1)症状の程度、(2)脱出の程度、(3)患者の全身状態を考慮して決定すべきです。

3. おわりに

O 直腸脱は高齢者、特に女性に多い病気で、社会の高齢化にともない増加傾向にあります。直腸が脱出すると活動が制限され外出するのも億劫になり、脱出が頻回になると肛門のしまりが悪くなり、便漏れをきたすことも多くなります。そしてQOLが低下します。
直腸脱に対する根治手術をすることで直腸の脱出がなくなると体の動きが楽になり、また、随意収縮の改善(肛門のしまりが良くなること)は日常生活を快適にします。直腸の脱出がなくなったことによりストレスが解消し、結果としてQOLは良くなります。

O 女性では肛門が出ていると思っていて、実は子宮脱(子宮が膣から脱出する病気)や膀胱脱、あるいはこれらを合併していることがあります。いずれにしても正確な診断と適切な治療法の選択により改善は可能ですが、何らかの症状に気付いたり、症状が気になったら早めに専門医による診察と検査を受けることが重要です。治療を受けるにあたっては、直腸脱の病態と治療方法について十分に説明を受け、認識することが必要です。
QOL : Quality of Life(生活の質、快適性)

監修 山本記念病院 黒水丈次 先生

下関市病院 桃崎病院 院長

下関 桃崎病院

 

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