痔核の治療 痔の治療 下関

痔核の治療法は保存的療法、硬化療法、ゴム輪結紮療法、手術療法などに大別できます。これ らのうち最近のトピックスは、硬化療法のうち 2%ミョウバン水溶液を内痔核に直接注射する ALTA 療法の登場と、手術療法の中で、専用の器械を用いて痔核奥側の直腸粘膜を環状切除する PPH 法が新しい治療です。

1) 保存的療法

果物・食物繊維の摂取と、便通をよくしていきみを避けることが、症状のある痔核の保存的治 療の基本です。 痛みか出血などの局所の血流障害を伴う痔核には温める温浴療法が良いです。薬物療法は、疼 痛、出血の緩和に効果がみられますが、一定期間使用しても痔核自体が消失するわけではないの で、その治療にはおのずと限界があり、脱肛症状を消失させる効能はないため、GoligherⅢ、Ⅳ 度の脱肛には無効です。

2) 硬化療法

痔核膨隆部局所に薬液を直接注射して効果を得る治療法で、長年、油性のフェノールアーモン ドオイル(PAO)のみが唯一の薬液でしたが、2005 年 3 月に水溶性の ALTA 注が発売され、注 目されています。

ⓐ フェノールアーモンドオイル(PAO) 5%phenol almond oil(PAOSCLE○R )を痔核、および痔核根部血管周囲に注射して炎症を起こ し、その二次的な線維化により痔核内の血流を低下させ、粘膜下組織を硬化させる方法です。出血のある痔核の止血を図りたい時には非常に有効で速効性があります。しかし、脱出する痔核(= 脱肛)を脱出しないように治す効果は期待できません。

ⓑ ALTA(ジオン注○R )(『アルタ』と読みます) 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液(Aluminum Potassium Sulfate・Tannic Acid) を 2%に希釈して用います。硫酸アルミニウムカリウムとはミョウバンのことであり、痔核へ速 効性の血流遮断作用を有し、止血効果と痔核の縮小効果がみられ、さらに痔核間質組織に無菌性 炎症反応を惹起させ線維化を起こすことにより痔核の硬化・退縮および固着させて痔核の脱出を 消失させる効果があります。ALTA(アルタ)は脱出する痔核に対して初めて効能・効果を有する 注射薬であり、今までは手術以外に治療法のなかった GoligherⅢ、Ⅳ度の脱出する痔核に対して 適応となる画期的な治療法といえます。ALTA 投与に際しては、図 3 のような四段階注射法を遵 守することが求められています。

投与日は入院であればベッド上安静とします。翌日からは入浴も可能です。病院により痔疾軟 膏剤、軟下剤、鎮痛解熱剤が処方されます。入院期間は 1~3 泊程度で、日帰り外来手術として行 われている施設も多くみられます。外来は約 1 週間後に通院してもらい、その後も数ヶ月後まで は定期的な受診が望まれます。 全身的には発熱が最も多いものですが重篤なものではありません。

局所の合併症は注射部位が 図 3 ALTA 療法の注射手技:四段階注射法 「①痔核上極部」「②痔核中央部深層」 「③痔核中央部浅層」「④痔核下極部」 の 4 ヶ所に注射する 痔核への実際の針の刺入は 3 回(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ) 深すぎたか注射量が相対的に多すぎるために起こるもので、注射部位の潰瘍やびらん、直腸狭窄、 前立腺炎などが報告されています。投与部位が硬結として触れることがあるので、肛門指診の診 察で癌と誤認しないよう注意が必要です。薬液が肛門の外側へ流出すれば肛門部の腫脹や疼痛が 見られます。

ほとんどの症例で初回排便時から脱出はみられなくなります。しかし、1 年後には 2~10%の 症例で脱出の再発が生じています。再発しても患者さんがもう一度「ALTA 療法を受けたい」と 希望することが多いのが本治療法の特徴といえます。 ALTA の適応は『脱出する内痔核』です。禁忌は、妊婦、授乳婦、腎不全の透析患者です。前 立腺癌などで放射線治療歴のある患者さんにも投与できません。 ALTA 療法の長期成績は未だ不明ですが、痔核の治療法を“手術で切除”から“注射で退縮” に変えていく可能性をもった治療法といえます。 さらに、今後は手術との併用により、その適応は拡大していくと考えられます。

Ⓒ ゴム輪結紮療法

専用の小さな輪ゴムを内痔核膨隆部の基部にかけ、ゴムの収縮力を利用して絞扼し、痔核を壊 死・脱落させる治療法で、比較的小さな脱出した内痔核や出血例に用いられます。やわらかで牽 引しやすいものや、単結節状に膨隆している内痔核が好適応であり、線維化で硬かったり、 の膨隆が小さすぎるものは、すぐ外れてしまい適応とならない可能性があります。

6. 手術療法

手術療法は、結紮切除法と PPH 法の 2 種類が主に行われています。

1) 結紮切除法(図 4)

痔核に対する手術治療法の中でその根治性、汎用性をもって標準術式と考えられているのが「結 紮切除術」です。本術式は 1937 年に英国の Milligan と Morgan が発表したもので、本邦には 1960~1970 年頃に導入されました。

基本概念は「痔核を肛門管の外から内へ縦方向に切離し根 部を結紮後に痔核を切除すること」です。その後、結紮切除の原型を改良し、重要な肛門組織の 損傷を可及的に少なくして治療効果を上げる方法の追求が行われてきました。

痔核手術の原則は 病的痔核組織の摘除により、肛門を正常に近い状態に復することであり、本邦においても術後出 血や疼痛などの合併症を低減しその安全性、確実性を高めるために数々の工夫、改良が重ねられ て現在にいたっています。 結紮切除手術はあらゆるタイプの痔核、あらゆる重症度の痔核に対しても適応となる手術方法 です。根治性も高いのですが、術後の疼痛や出血などの合併症が多いところが欠点です。

1) PPH 法

PPH とは、Procedure for Prolapse and Hemorrhoids の略であり、自動環状縫合器を用いて、 痔核上極奥側の直腸粘膜を環状に切除・縫合することで、伸長・滑脱した anal cushion を吊り上 げて固定し、同時に上直腸動脈の血流を遮断し、内痔核を縮小させる手術です。Circular stapled hemorrhoidopexy であり、痔核自体を切除するわけではなく、結紮切除手術とはその手術原理が 大きく異なります。(図 5)。つまり、結紮切除手術は肛門管軸に対し縦方向に病変の痔核を切除 し、根部で結紮するのに対して、PPH 法は肛門管軸に対し横方向に環状切除・縫合するものです。 肛門管内に創がないため、術後疼痛が軽微であるという利点があります。PPH の適応としては、 痔核では Goligher Ⅲ、Ⅳ度のもので全周性に近く滑脱するものが好適応となります。また、 Whitehead 手術後の直腸粘膜脱の症例も適応となる。 術後の疼痛が少なく社会復帰が速くできるというメリットがありますが、脱肛の再発率や術後出 血率が結紮切除法よりも高いというデメリットがあります。

7. 最後に

治療後も再発の可能性は残っています。治ったと安心しすぎて無理をしたり、生活習慣が乱れ て便通がコントロールできなくなったりすると、再発の可能性は高まります。便秘や下痢をしな いような日常生活の習慣や食事に気をつけること、治療時に受けた生活上の注意点などを守りつ づけることが何よりも大切なのです。初期なら保存的な治療で治ることもあるので、症状があれ ば早めに受診することも必要であるといえるでしょう。

監修 辻仲病院柏の葉 辻仲 康伸 先生  東葛辻仲病院  松尾 恵五 先生

下関市病院 桃崎病院 院長

下関 桃崎病院

 

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