切れ痔について? 下関 

便が硬くていきんだ時に、肛門に痛みが走って拭いたら紙に血が付いたという経験を持つ人は多いのではないでしょうか。この症状は裂肛(切れ痔)によって生じることが多く、肛門疾患の中でも痔核と並んで多くみられます。一般に男性より女性に多くみられ、特に20代から40代の女性で割合が高くなります。裂肛はすぐ治るものから、何度も再発を繰返して慢性化した結果、肛門狭窄(肛門が狭くなる)を引き起こすものまであり、この状態になるとお薬などの保存療法では良くならず、手術が必要になります。したがって他の肛門疾患同様、悪化させない、慢性化させないように適切な治療を早めに受けることが大切です。ただし裂肛の大きな原因である便秘を改善するためには皆さんのセルフケアも欠かせません。そこで裂肛について正しい知識を持っていただけるよう裂肛の症状、原因、分類、治療などについて解説したいと思います。

 

1. 症状

1)痛み
裂肛とは、肛門上皮にできた傷をいいます。この傷は肛門の内側にできるため外から見ることはできせんが、皮膚と同じように知覚神経がある場所なので、痛みを感じるのが特徴です。この痛みは排便時や排便後に、硬い便が肛門を物理的に引き伸ばすことと便内容による科学的な刺激が加わり起こります。時に排便後に内括約筋のけいれんが起こると、強い痛みが長時間続くこともあります。この状態になると排便がこわくなり、排便を我慢することになります。そしてさらに便が硬くなり、ますます便秘がひどくなることでまた切れてしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
2)出血
肛門上皮が裂けて出血がみられます。出血の程度としては多くの場合紙に付く程度で少量ですが、場合によってはポタポタたれるような出血や便器が真っ赤になることも珍しくありません。
3)違和感、脱出、掻痒感
裂肛が慢性化して、見張りいぼや肛門ポリープができて大きくなると、肛門周囲に違和感や掻痒感を生じたり、排便時に肛門ポリープが出てくることもあります。

 

2. 原因

1)便秘
排便時に硬い便をすることで切れてしまうことから、日常的に便秘の方に多くみられます。ただし下痢を繰り返すことで、傷が治りにくくなることもあります。
2)肛門内括約筋の過緊張に伴う虚血
肛門の緊張が強い状態、すなわち内括約筋の緊張が高まると、血流量が低下するために傷が治りにくい、つまり裂肛を繰り返しやすいという海外の報告もあります。
3)その他
肛門上皮の脆弱さや元々肛門が狭い場合など

 

3. 分類

1)急性裂肛
急にできた浅い傷は便通を整えることやお薬などで短期間に治ってしまいます。
2)慢性裂肛
長期間切れた状態が続くと、傷は潰瘍化して深くなります。そして裂肛の外側には皮垂、すなわち見張りいぼができたり、内側には肛門ポリープができることがあります。さらに裂肛から内括約筋に炎症が及ぶと、肛門が硬く狭くなってしまいます。
3)随伴性(脱出性)裂肛
内痔核や肛門ポリープなどが繰り返し脱出する際に潰瘍の側方が引っ張られて裂けることによっておこります。この場合の痛みはとても強く、診察できないこともあります。
4)症候性裂肛
全身性疾患が存在し、その部分症状として肛門部に裂肛ができるもので、梅毒やクローン病などがあります。

 

4. 治療

1)保存療法
特に急性裂肛の治療では坐薬、軟膏、軟便剤の3つの薬を使った薬物療法(保存療法)が基本です。坐薬は肛門の奥に挿入します。軟膏は肛門の周囲に塗るのではなく、肛門から注入して患部に直接塗るようにします。これらには炎症を抑えたり、止血したりする効果があります。軟便剤には便をほどよい軟らかさにして、排便時の痛みを軽減する働きがあり、裂肛の悪循環を断ち切ります。
2)手術療法
肛門狭窄がある場合、狭窄の程度によって用手肛門拡張術、内括約筋側方皮下切開術(LSIS)、皮膚弁移動術(SSG)などがあります。用手肛門拡張術とは、切開は行わず肛門に指を挿入して狭くなった肛門を広げる方法です。LSISとは、肛門の皮膚からメスを入れ、内括約筋を浅く切開して肛門を広げます。SSGとは、まず裂肛部分や肛門ポリープなどを切除した後、内括約筋を一部切開し肛門を十分広げ、奥の粘膜と肛門皮膚を縫合し固定します。固定した部分に緊張がかからないようにするために、すぐ外側の皮膚を弧状に浅く切開してその皮膚を肛門内側にスライドさせます。
これらの外科的手術を行うことによって狭窄が解除されるので、裂肛が良くなります。
また肛門狭窄がない場合でも見張りいぼや肛門ポリープが気になるようでしたら、切除することもできますが、放っておいても問題ありません。
3)生活習慣の改善
裂肛の主な原因は便秘や下痢などの便通異常なので、再発を防ぐためには食生活や排便習慣に気をつけて便通を整えることが大切です。
食生活の改善?しっかり朝食をとる、水分や食物繊維をとる、刺激物やアルコール飲料をとりすぎないなどを心がけることが大切です。
排便習慣の改善?便意を我慢せずにトイレに行き、長居は避けて3分間を目安に切り上げてください。
その他の注意?シャワーだけでなく、湯船につかって体を温め、お尻の血行を良くすることも大切です。そして何より全身がリラックスすることがお尻のリラックスにつながりますので、心穏やかに過ごされますことをお勧めいたします。

監修 マリーゴールドクリニック  山口トキコ先生

下関市病院 桃崎病院 院長

下関 桃崎病院

 

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